奇会的魔女観測

+11+ + + +

 紫条ビルの屋上にワタシはいた。
 そこには白陽高校の生徒3名と御堂大生がいる。高校生1名は肩を止血していた。ハンカチで適当に縛っただけの応急処置だ。
「つまり更科さん、イラさんの予言にないからどうせ死なないだろうと思ってナイフ投げたってことですか」
 メーコの言葉に、大学生はにこりと笑う。
「意趣返しって言ったじゃない。清和さんを巻き込むつもりはなかったのよ。飛行を見られたのは痛かったわね」
「じゃ、じゃあキミは、ずっと黙ってるつもりだったの?」
 清にぃが焦るなんて珍しい。
「そうよ。むしろ口止めしたのわたしだもの。清和さんには奇会都市のことを知って欲しくなかったのよ」
「俺がこそこそやってたのがバカみたいじゃないか……」
「あ、清にぃは地学室に何をしてたんですか」
「それは秘密だよ」
「ならわたしたちも奇会都市について言えることはありません」
 きっぱりとメーコが断言すると、清にぃは困ったように笑った。
「清にぃさんそれは利己的すぎるって」
 靖人の突っ込みでも清にぃの表情は変わらない。
 ワタシはのんびりとそんなやり取りを眺めていた。奇会都市は本当にどんな集団なのだろう。なんで集まっているのかもよく分からない。
 理由はあるにはあるのだが。
「だからってあの実験はさすがに、ね。でも今回は失敗だった」
「あれって失敗だったんですか」
「むしろこれから地学室に出入りして平気なのか?」
 清にぃが三日月の笑みを浮かべる。一瞬にして、それはワタシ以外の全員に伝染した。恐ろしいとは思わない。
 これが見分ける秘訣だ。
「スイッチを入れなければただの地学室だ。実際あの場では何もしてないよ。更科に阻止されたから」
「あぁ、そういえば、清にぃがスイッチ入れようとした時地学の先生の悲鳴が聞こえたんですよね」
 清にぃが何をやっているのかはワタシも知らない。
「――イラさん」
 メーコがワタシを見ていた。
「雪村さんとこの事件以前から面識がありますね」
 直球、しかも狙いは正確で、ワタシは言葉に詰まりそうになった。一体どうしてそれが分かったのだろう。それを知るには研究所のことも知っているのだろうか。
「ないよ」
「そう――勘だからいいけど。清にぃ、雪村さんにイラさんの話はしない方がいいんですよね」
「あぁ。諸事情あってね」
 勘でなぜ。電話で司が出ることは未来記で分かっていたことだ。他の人でも別に構わなかった。
「さて、そろそろ帰ります。では」
 話の区切りがついたところで、メーコとナシキと靖人は帰っていった。
「次の予定はあるのか?」
「なんの?」
 唐突な清にぃの問いにワタシはとぼける。
「奇会都市の、次の事件」
「ああ……さぁね」
 屋上に、ひとり。ワタシはこうして過ごしている。
 図書館に行こうか。

『魔女と現在(いま)の一週間』、観測終了。

奇会的観測、終了