奇会的小唄観測

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 夏休みに入った。わたしは宿題と戦っていた。
 随分時間が早く過ぎた気がする。
 ただ、まだわたしは奇会都市にいて、犯罪は当たり前になっている。それだけの話。
「芽衣子、お昼食べる?」
「うん」
 1階からの声に返事し、自室から階段を下りてリビングに行く。妹の文子は既に蕎麦をすすっていた。
「メーコ姉、あとで勉強教えて」
「良いよ。また数学?」
「うん」
 当たり前になってしまった日常はいつか崩れる。知っていても悲しい話だ。わたしは将来家族を殺すかもしれない。今だってそうできたらどれくらい愉快か本気で考えてしまう。
「受験生の夏ね」
 母がそう言い、
「わたしちゃんと勉強してるよ」
 文子が口を尖らせる。わたしは昼食をいただく。
「でもこの前模試C判だったんでしょ」
「メーコ姉、なんで知ってるの」
「机に置いてあったのが見えた」
「ひどーい。もう、高校生になったらきっと首席取ってやるんだから! 恋はまだ無理だけどっ」
 わたしは笑った。母も文子も笑った。
 そういう、夏。

『不詳の子守唄』、観測終了。

奇会的観測、終了