奇会的小唄観測

奇会的(きかいてき)観測、開始

 中間考査も間近に迫っている。わたしはいつもこの時期が嫌いだ。雨で気分がふさぐから。自分の誕生日から1ヵ月が過ぎ、白陽(しらひ)高の夏服も届いて、合着を着る人も多くなっていた。
「それで今日はこんな妙なところに来たわけだな」
 わたしと有也(ゆうや)は紫条(しじよう)ビルの屋上にいた。屋上にはプレハブ小屋が建てられている。
「変なんだけど、紹介はしておいた方が良いかな、と思って」
「清(きよ)にぃの弟さんっていうからには変わってるんだろうな」
 学校帰りにここまで来たが、プレハブ小屋の主人、イラは不在の可能性もある。スマホにかけてもメールしてもめったに出ないし返信も寄越さないのだ。
「お邪魔しまーす」
 曇天の下、わたしはプレハブ小屋のドアを開けた。
「やあ、メーコさんに……お友達かい」
 すらっとした中性的な少年がいた。わたしと同じ学年にあたる、御堂(みどう)高の生徒。紫条某――通称イラである。
「澤村(さわむら)っていう。イラ……って呼んでいいのか?」
「ドウゾ。ワタシは本名で呼ばれなければ特に呼び名にはこだわらない」
 テーブルと椅子が5つ、ふたり掛け程度のソファ、奥はキッチン。万年床は左手にあり、右手が洗面所。風呂はないが紫条ビルの中にあるので生活には問題ないという。
「コーヒー飲めるかな? 澤村」
「お、おう」
 まもなく、コーヒーがみっつテーブルに置かれた。豆から挽いた本格的なものだ。椅子に座ってコーヒーをいただく。
「今日はおまえに話したいことがあって来た」
「へえ。初対面のワタシに何か?」
 有也は身を乗り出して、小さいがはっきりした声で切り出した。
「メランコリック・ララバイを知ってるか」